それでも、あなたを愛してる。【終】
「ん、……ッ」
─また、唇を奪われて。
また深いそれに、依月は涙を流した。
勿論、生理的なものだ。苦しくて、出るもの。
「─……戻っておいで、依月」
解放されてすぐ、耳元で囁かれたのは。
「他の男の、否、俺以外の奴と一緒にいることは、許せそうにない」
「……契」
「あの子と地獄へ行くこともダメ。天国云々じゃなくて、俺と一緒じゃないとダメだよ。依月」
「……っ」
「お前を傷つけるもの全て、無くなってしまえばいいと思ってる。─正直、封印が解けたことも面白くないよ。お前の笑顔を見るやつの目を抉り出してやりたい。笑いかけて欲しくないし、俺の知らないところで泣いて欲しくない。他にも色々と思うことあるけど……な?最低だろ」
頬に触れる手は、冷たかった。
笑っているのに、この冷たさ……ああ、やっぱり、あなたは優しい人ね。
「大切にしたいのに、めちゃくちゃにもしたいんだ。俺の事以外考えなければ良いと思うし、何なら、閉じ込めてしまいたいと思った時もある」
「……」
「どこにも行くな。頼むから」
「……っ」
「…………怖い?」
諦めたような、目。
苦しそうな、顔。……私が知りたかった、契。
「怖いなら、今すぐに逃げた方が良い。寝かせてあげるなんて言いながら、元は一緒に住んでいた家とはいえ、連れ込むような卑怯な男だよ。俺は」
─まるで、試されているようだ。
逃げるのか、逃げないのか。
試すような目をしてて、依月は思わず微笑んだ。
(なんて、愛おしい人なんだろう)
心臓が高鳴っている。
貴方の瞳が、これまでと違っている。
今なら、依月が知りたい貴方を知れるかもしれない。
片手は絡み取られたまま、
「……逃げなよ」
なんて、笑うしかないでしょう。
依月が強く引くと、手は解けた。
それに軽く目を見張った貴方の両頬を包み込んで、依月は「いいよ」と、告げた。