それでも、あなたを愛してる。【終】



「怖くないから、逃げない。知りたかったこと、教えてくれて嬉しい。だからね、いいよ」

手首を掴まれる。彼が、屈む。

「……依月」

「いいよ、契。契の好きなように、めちゃくちゃにしていいよ。そんなことで嫌いにならないよ」

ずっとずっーと、引っかかっていたこと。
この人は、同情で依月のそばに居ないかってこと。
でも多分、そんなんじゃないよね。
……私が全部、悪いんだけど。
それは間違いないんだけど。自惚れていいよね。

「私、あなたに愛してるって伝えたくて、帰ってきたんだもん。だから、いいよ」

わがままを言いたくなかった。
……嫌われたくなかったから。

でも多分、契は何をしても依月を拒絶しない。
だから、私も。

「ね、契。私、契になら、何されても大丈夫なんだよ」

そう言いながら、依月はそっとキスを返した。
これまで、ずっとされてばかりだったから。
少しばかりの、想い返し。

やっぱり今でも、この人の横は荷が重い。
釣り合わないし、もっと良い人がいると思う。

でもね、少なからずともあなたが持っている欲を、私は理解出来るから。
……少し、安心しちゃったから。

「……わかってるのか」

「うん」

「キスの意味も、好きなようにめちゃくちゃなんて……本当にわかってる?」

正直、詳細は全然わかんない。でも。

「うん」

「逃げられなくなるぞ」

「うん」

「……いいのか」

何度も確認とってくれる契は、やっぱり優しい。

「良いよ」

契に触れられることは、嫌いじゃない。

「良いの」

あたたかくて、幸せになれるから。

「……私、不安なこといっぱいなの。だから、後で話聞いてね」

抱き上げられて、向かう先なんてわかりきってる。

「……本当に、逃げなくていいんだな?」

心配性なあなた。目の前のベッドに依月を下ろす前に、また確認してくれる。

「良いよ」

「……最低な野郎にならないように気をつける」

「フフフッ」

大好きな人と笑い合える生活は、良いね。

「ッ、……」

優しく、深く。─凄くあったかい。

「契が最低野郎になっても、それでも、私は契を愛してるよ」

貴方の言う、最低野郎が何かはよく分からない。
だって、貴方が優しくなかった時がないもの。

「依月」

何となく手を伸ばして、頬に触れる。
甘えるように頬を寄せて見てくるあなたに、胸が高鳴り、依月は涙を零した。

「…っ、ん、ッ…んぅ…」

─愛おし過ぎて、涙が出るなんて。
貴方に出会えなかったら、きっと一生、知ることはなかった。


< 181 / 186 >

この作品をシェア

pagetop