それでも、あなたを愛してる。【終】
「怖くないから、逃げない。知りたかったこと、教えてくれて嬉しい。だからね、いいよ」
手首を掴まれる。彼が、屈む。
「……依月」
「いいよ、契。契の好きなように、めちゃくちゃにしていいよ。そんなことで嫌いにならないよ」
ずっとずっーと、引っかかっていたこと。
この人は、同情で依月のそばに居ないかってこと。
でも多分、そんなんじゃないよね。
……私が全部、悪いんだけど。
それは間違いないんだけど。自惚れていいよね。
「私、あなたに愛してるって伝えたくて、帰ってきたんだもん。だから、いいよ」
わがままを言いたくなかった。
……嫌われたくなかったから。
でも多分、契は何をしても依月を拒絶しない。
だから、私も。
「ね、契。私、契になら、何されても大丈夫なんだよ」
そう言いながら、依月はそっとキスを返した。
これまで、ずっとされてばかりだったから。
少しばかりの、想い返し。
やっぱり今でも、この人の横は荷が重い。
釣り合わないし、もっと良い人がいると思う。
でもね、少なからずともあなたが持っている欲を、私は理解出来るから。
……少し、安心しちゃったから。
「……わかってるのか」
「うん」
「キスの意味も、好きなようにめちゃくちゃなんて……本当にわかってる?」
正直、詳細は全然わかんない。でも。
「うん」
「逃げられなくなるぞ」
「うん」
「……いいのか」
何度も確認とってくれる契は、やっぱり優しい。
「良いよ」
契に触れられることは、嫌いじゃない。
「良いの」
あたたかくて、幸せになれるから。
「……私、不安なこといっぱいなの。だから、後で話聞いてね」
抱き上げられて、向かう先なんてわかりきってる。
「……本当に、逃げなくていいんだな?」
心配性なあなた。目の前のベッドに依月を下ろす前に、また確認してくれる。
「良いよ」
「……最低な野郎にならないように気をつける」
「フフフッ」
大好きな人と笑い合える生活は、良いね。
「ッ、……」
優しく、深く。─凄くあったかい。
「契が最低野郎になっても、それでも、私は契を愛してるよ」
貴方の言う、最低野郎が何かはよく分からない。
だって、貴方が優しくなかった時がないもの。
「依月」
何となく手を伸ばして、頬に触れる。
甘えるように頬を寄せて見てくるあなたに、胸が高鳴り、依月は涙を零した。
「…っ、ん、ッ…んぅ…」
─愛おし過ぎて、涙が出るなんて。
貴方に出会えなかったら、きっと一生、知ることはなかった。