それでも、あなたを愛してる。【終】
☪
「─契、お待たせ」
夜。書斎で仕事を片していると、依月が入ってきた。それを確認し、契は眼鏡を外す。
「誉は寝た?」
「ええ。爆睡。お兄ちゃんといっぱい遊んでいたもの。疲れちゃったのよ」
依月がそう言いながら、机の目の前に置いている来客用のソファーに座ったので、
「依月」
契は外した眼鏡を机に置いて、彼女を手招きした。
彼女は目を瞬かせると、微笑んで、契の元へ来る。
そんな彼女をそのまま、自分の足の上に抱き上げて座らせると、契は依月を腰に両手を回し、依月の肩に顔を埋めた。
依月はくすぐったそうに笑いながらも、離れず、抱き締め返してくれる。
その時間が、契にとっての癒しの時間。
毎晩、余程のことがない限り、この時間を設けている。
「─そういや、契。今日、お兄ちゃんと何を話していたの?」
「ん〜? 」
情報共有も大事だ。そう思い、契は昼間のことを依月に話した。
「そんな未来が……」
「難しいんだと。未来を変えるのが」
「お兄ちゃんが彩蝶と結婚すればいいだけじゃ……?」
「なんか、そういう問題だけじゃないらしいよ。最近は春の家が─千景達がバタバタし始めて、悠生も悩んでた。今のタイミングの引退が、未来に響くかもって」
「でも、結婚したからって、調律者引退しなくちゃいけない訳じゃなくない?そりゃ前ほど危険な真似はしないで欲しいけど……」
「そこら辺の因果はよく分からないけど、彩蝶と結婚するということは、四季の家に身を捧げるということだ。時の巡りに身を落とせば、どれだけかかるか分からない中、彩蝶を妻にする自分を認められないと」
契の言葉に、依月は俯いて。
「それなら、正しく帰って来れる導きが必要ってことになるわよね」
「導き?」
「ええ。─こっちだよ、って、呼ぶ係?っていえば良いかしら。私の場合は、両親だった」
懐かしむ依月。その横顔はどこか、寂しそうで。
「─明日、お兄ちゃんに連絡してみる。このまま、お兄ちゃんと彩蝶が平行線で居続けるのも、未来に響くと思うから」
ちゃんと乗り越えて、ここにいてくれる最愛。
「ん。何かやることあったら、必ず言ってな」
「フフッ、うん。ありがとう」
─夫婦の時間。
熱を分け合い、互いを認め合う時間。
「今日も愛してるよ、依月」
「私も、契を愛してる」
─そして、時はまた巡り続ける。
多くの幸せと哀しみを渦巻きながら。
「─契、お待たせ」
夜。書斎で仕事を片していると、依月が入ってきた。それを確認し、契は眼鏡を外す。
「誉は寝た?」
「ええ。爆睡。お兄ちゃんといっぱい遊んでいたもの。疲れちゃったのよ」
依月がそう言いながら、机の目の前に置いている来客用のソファーに座ったので、
「依月」
契は外した眼鏡を机に置いて、彼女を手招きした。
彼女は目を瞬かせると、微笑んで、契の元へ来る。
そんな彼女をそのまま、自分の足の上に抱き上げて座らせると、契は依月を腰に両手を回し、依月の肩に顔を埋めた。
依月はくすぐったそうに笑いながらも、離れず、抱き締め返してくれる。
その時間が、契にとっての癒しの時間。
毎晩、余程のことがない限り、この時間を設けている。
「─そういや、契。今日、お兄ちゃんと何を話していたの?」
「ん〜? 」
情報共有も大事だ。そう思い、契は昼間のことを依月に話した。
「そんな未来が……」
「難しいんだと。未来を変えるのが」
「お兄ちゃんが彩蝶と結婚すればいいだけじゃ……?」
「なんか、そういう問題だけじゃないらしいよ。最近は春の家が─千景達がバタバタし始めて、悠生も悩んでた。今のタイミングの引退が、未来に響くかもって」
「でも、結婚したからって、調律者引退しなくちゃいけない訳じゃなくない?そりゃ前ほど危険な真似はしないで欲しいけど……」
「そこら辺の因果はよく分からないけど、彩蝶と結婚するということは、四季の家に身を捧げるということだ。時の巡りに身を落とせば、どれだけかかるか分からない中、彩蝶を妻にする自分を認められないと」
契の言葉に、依月は俯いて。
「それなら、正しく帰って来れる導きが必要ってことになるわよね」
「導き?」
「ええ。─こっちだよ、って、呼ぶ係?っていえば良いかしら。私の場合は、両親だった」
懐かしむ依月。その横顔はどこか、寂しそうで。
「─明日、お兄ちゃんに連絡してみる。このまま、お兄ちゃんと彩蝶が平行線で居続けるのも、未来に響くと思うから」
ちゃんと乗り越えて、ここにいてくれる最愛。
「ん。何かやることあったら、必ず言ってな」
「フフッ、うん。ありがとう」
─夫婦の時間。
熱を分け合い、互いを認め合う時間。
「今日も愛してるよ、依月」
「私も、契を愛してる」
─そして、時はまた巡り続ける。
多くの幸せと哀しみを渦巻きながら。