それでも、あなたを愛してる。【終】
始祖
「おかえり〜」
─椿家の方々に別れを告げ、家に帰ると、1人の長髪の男性が待っていた。
「……ただいま?」
誰かは分からないまま、挨拶を返すと、彼は楽しそうに笑い出し、
「お前は良い子だね〜!」
と、契の頭を撫でまくる。
ハイテンションの楽しそうな見知らぬ男に、千景と凛は引いていて、契だけが餌食同然。
でも、見知らぬ彼の背後で両親が微笑んでいるので、身元不明な男では無いことは明らか。
「冬仁郎から連絡貰ってきたんだ。契、君の恋人が“管理者”に連れていかれたって?」
「ええ、そうは聞いていますが」
「消す?消しちゃう?」
「いや……悪意はなさそうでした。そして、なにか特別な理由があることも察しています。それよりも許せないものはあるので、消しません」
あの後、皇が戻ってくることはなかった。
彩蝶はあと少しだけ時間を頂戴、と言い、その時間を満喫したら、四ノ宮へ帰るらしい。
「ふーん……大人だね♪良い子良い子」
頭を撫でられ、変な感じ。この年齢になってもまだ、自分がされる側になるとは。
「冬仁郎がさ、『神話の話』をして欲しいんだって。真実の話。紙に残せない話。生贄の話。─僕の話。聞きたい?」
「聞きたいです。でも、貴方は─……」
「うん?─ああ、そっか。今の僕、とっても怪しいもんね。僕の名前は、司宮ユエ」
「シノミヤ……?」
「うん。でも、君達の考える四の宮じゃなくて、司る宮の方ね。真の君達の主でもある……なんて言ったら、君たちを混乱させちゃうか」
身体を伸ばしながら、くるくるとその場で回り出す彼についていけないでいると、それを見兼ねた両親が忍び笑いながら、
「ユエ、既に混乱してる」
と、彼に声をかける。
すると、彼は動きを止めて、目をぱちくり。