それでも、あなたを愛してる。【終】
「─それらの神々を鎮めるために生まれたのが、司宮家だったんだよ」
それももう何百年前の話だけど、と、刹那は言う。
「ある時、四季の家の中で生まれたとある子どもが現状を理解した。そして、それをひどく嘆き、大人になって、司宮家を作った。あたかも元からあった神話のように、人々の記憶に司宮家の存在を刻み込み、四季の家を取り纏め、少しでも輪を乱すものがあれば、裏で始末していた」
「……」
「でも、彼も人間だから。─彼が亡き後はもちろん、そんなに長い時間が経つ間もなく。誰だって、『持たぬもの』には憧れるものだ。だから、彼らは今度はこれまでの【生贄】を捧げるのではなく、閉じ込めた。何故なら、司宮家が出来た後、彼の言うことも聞かずに捧げられた【生贄】をきっかけに、国が滅びかけたから」
その時代には既に、四季の家の存在は大きなものになっていて、政を担う人間もまた、四季の家に目をつけていたから、その責任は重かった。
─【生贄】は、一代にひとりだけの存在。
四季の家のどこかで生まれれば、そのひとりが【生贄】として、家の犠牲になっていく。
「閉じ込められた人達は泣き叫んだ。『出して』『助けて』って。そして、それを助けていたのが、司宮家だ。─でも、多勢に無勢。四季の家のみならず、国の重鎮も襲いかかれば、司宮家もひとたまりもない。大きな家でもなかったし、彼は子を1人しか持たなかったからね」
「それで、司宮家は居なくなったの?」
「いや?彼が残した一人息子の子供たち……三姉妹のひとりを、四季の家の男が無理やり妻にした。残り二人の姉妹は全く無関係の家に嫁がされ、何も分からぬ幼き末っ子が無理やり妻にされた時、三姉妹の両親は殺されている」
「……」
止まらぬ涙は、相変わらず止まらないまま。
まるで、この空間のどこかに存在している過去の消えることが出来ない魂が、泣き叫んでいるかのように。