それでも、あなたを愛してる。【終】
「朝霧、さん?」
「ん〜?」
「あ、もしかして、考え事してました?それとも、寝てた...?」
「流石にこのタイミングでは寝ないよ〜いろはのお母さんのことを思い出していただけ」
そう言うと、彼女は優しく微笑んで。
「お母さん、素敵な人ですか?過去に行っても、会えなかったし......」
それはそうだ。
朝霧が施した結界の中で、彼女は生きていた。
過去に戻ったところで、何も知らぬいろはが踏み込めるほど、管理は甘くしていない。
「─とても、とても強くて優しい人だよ」
だから、代わりに朝霧が伝えるのだ。
「皇、まだ起きそうにないし、今日はいろはのお母さんとの思い出話をしようかな」
「え!ほんとう?嬉しい〜!」
何回でも、何十回でも、何百回、何千回でも。
“君”を語り続けて、忘れないよ。
『朝霧!』
君は、灰になってしまった。
そんな君の夢を、今でも僕は見る。
長い年月をかけて、きっと君は、忘却の彼方へ行くのだろう。
それを受け入れることが出来る日がくるかは分からないけど、どうかその日まで。
「何から話そうか」
─僕は君の代わりに、この子にたくさんの愛を注いであげたいと思うよ。