それでも、あなたを愛してる。【終】
第四章☪ ‎愛し愛されること

贖罪と生贄と



─1年半後。

「身内だけの集まりね〜」

「招待客は、彩蝶セレクトみたいだよ」

「なら、安心して楽しめるな」

「彩蝶が嫌いな人間、全員、俺たちも嫌いだもんね」

ざわついている人々は無視して、四ノ宮家の庭を闊歩し、男達は勝手に玄関を開けた。

「─うわっ、礼儀のひとつも知らないの」

開けた瞬間、玄関でアイスを齧っていた男がビビったように身を引いて、

「出迎えようとしたのに」

と、口を尖らせる。

「礼儀で言うなら、夜霧の態度も相当だよ」

「確かに。アイス齧りながら、客人を迎える礼儀なんて聞いたことないよね」

「あーあー、人間じゃないからわかんないー」

......千景の双子の弟である千陽(チハル)と、秋の家─桔梗家当主の凛に突っ込まれて、逃げるように玄関をあがり、奥へと歩いていく自由すぎる態度。

「彩蝶ー!」

この家の居候でありながら、堂々と当主の名前を呼び、食べ歩くこの姿は人間ならば、到底真似出来ないだろう。

それくらい、普通の人間には耐え難い空気が、この屋敷には纏われており、使用人がひとりもいないのも納得なほどだ。

「─おや、こんにちは」

その後ろ姿を眺めていたら、背後から声をかけられた。
振り向くと、微笑んで立っている白衣姿の朝霧。

「朝霧も参加するの?」

「ええ。いろはが楽しみにしてまして」

「お姉ちゃんのこと、大好きだね〜」

「そうだね」

千陽と話で盛り上がる朝霧は、夜霧と同じような存在だった。

そうは見えないけど、人ならざるもの。
既に何百年も生きているという彼は勝手を知った顔で、

「お入りください。玄関に入れてるので、この先で彩蝶の結界に遮られることはありません」

と、室内へと入っていく。

「んじゃ、お邪魔しまーす」

そう言われて、速攻でついて行くのが何とも千陽らしく、その手に引かれて、千景もあがる。

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