それでも、あなたを愛してる。【終】
そんな契たちの雰囲気に水を差すように、
「まぁ、あんな殺され方しちゃな」
と、夜霧が呟いた。
「こら、夜霧。あまり、人間に踏み込まない」
「......お前が言うか、朝霧」
「勿論。人の死に際を、僕達が簡単に評価しちゃだめだよ。まぁ、確かに心臓が凍るなんて...珍しい症例ではあるけども」
「顔が楽しそうなんだよ、てめーは。医者としての興味本位か?趣味わりぃ」
「えー」
にっこにこの朝霧は、本当に楽しんでいるのだろう。引いている夜霧のほうが、多分、まともな神経をしているんだろうな、なんて。
「─やばいかもな」
「え?」
死因の話や事件の詳細を聞いて、これからのことについて考え込んでいると、ユエが呟いた。
「ヤバいって何が」
「もうちょっと頑張らないと、連れ戻せなくなるかもしれない。─ティエ、どう?」
ユエに振られて、横に無言で座っていた彼女は目をぱちぱちさせると、
「依月を、安全に、取り戻したいってことだよね。それなら、もう手遅れだよ」
と、サラッと口にした。
「きっと、あの子は契の元へは帰らない」
「.....................は」
目眩がした。
世界の根底が覆るような感覚に、頭が痛くなる。
唐突になんだ。どうして?
─言葉が死んでいき、音にならない。
心臓が痛くなり、視界が霞んでいくような。
「─おい、いくら人間じゃなくても、俺らでも分かるぞ。言葉を選べ、馬鹿ティエ」
「?、......あ、ごめん」
契の目元を後ろから覆い隠しながら、夜霧がティエに怒る。
「そうだね。いくら何でも、無神経すぎるよ。それを支えるのが、君の役目でしょ。ユエ」
それに便乗するように、朝霧も。
「おいおい、やめてくれよ、ティエを責めるな」
「だったら、言葉の使い方くらい教えとけ。この老害め」
「うわっ、生意気ー!こちとら、転生したから、君よりも肉体は若いんだけど!...怖かったね、ティエ...よしよし」
呆然とするティエを抱きしめるユエ。
そんなユエの胸元を手で押し退けて、
「そっか。...あの言い方はダメなんだね。ごめんね、契。私、ユエに育てられて、ユエだけの世界で死んで、今もユエと物心ついた時から一緒にいるから、ユエの昔の真似してるだけなんだけど、これ、人間相手にはダメなんだね......」
シュン、としたティエは契の頭に手を伸ばして。