それでも、あなたを愛してる。【終】
「も〜神様達は無神経で嫌だね〜」
ぐるぐるする契を現実にとどめるように、千陽が契の肩に触れる。
「千陽......?」
「契、大丈夫だよ。俺はちゃんと見てたから、知ってるよ。契はちゃんと、依月を愛してた。依月も契を愛していた。誰かを愛することに意味なんて必ずあるものだし、二人の場合はそれが本能によるものだっただけ。もはやそれは運命の恋じゃない?」
にこにこと笑いながら、千陽は続ける。
「落ち着いて、違う視点から見て。考えて、判断するの。─あの偽物が、依月と同じものを持っていたとして、契はあの子を抱けるの?」
「無理」
「アハハッ、即答じゃん!」
「だって無理だし......」
「じゃあ、何も考え込む必要ないでしょ。契は依月を愛していて、依月も契を愛しているから、互いが安定剤の役割を果たしていた。契を失ったから、彼女はコントロールが出来なくなって、今回の事件を起こしてしまった。それだけだ」
あっけらかんと言った千陽に続いて、
「でもまぁ、依月の性格を考えれば、ろくなことを考えないだろうね。その一家の事件に、彼女が関わっているなら」
と、凛が呟いた。
「依月がいるであろう空間、人間である俺達は無理かもしれないが、神たるあなた達にも入ることは出来ないのか?」
「んー、入れるよ〜と言いたいところだけど、ユエも、ティエも、人ならざるものに近い人間の身体だから。そして、夜霧も僕も人ならざるものではあるけど、やっぱり、この身は元々人間。その空間を見つけることは出来ても、入ることは難しい」
「...どうして?」
千景からの質問に答えた朝霧に、いろはが問う。
「どうして、難しいの?皇は私を探すために色々やってたって、依月さんがいる場所は恐らく、彼の領域だろうって言ってたけど...?」
いろははそう言いながら、隣に座る皇を見る。
皇は少し考えた顔をしたあと、
「理論上は、連れ戻すことは可能だと思います」
と言った。