それでも、あなたを愛してる。【終】

第1節☪ ‎覚悟



「─いらっしゃい」

凛について行ったら、たどり着いたのは朱雀宮家。
契の実家、現当主夫妻─契の両親が住まう家。

「うちの子の様子、わざわざ見に行ってくれてありがとね〜」

出迎えてくれたのは、契の母親─静(シズカ)さん。

「ううん。それはいいんだけど。めちゃくちゃ暴れてたから、家具は全部買い直しになりそう」

「あらあら……まぁ、それであの子が落ち着くなら良いわ」

静さんはいつも通り穏やかな声音で、居間に千景達を案内してくれた。

「俺に連絡してきた時も思ったけど、静さん、めちゃくちゃ落ち着いてるね」

既にお茶菓子などが用意されていた席に座り、凛が訊ねると、彼女は微笑んで。

「だって。依月ちゃんは絶対、あの子を裏切ったりしないもの。何かあったことを分かっているからこそ、契も落ち着かないのでしょうし」

「依月が契との結婚が嫌になって逃げ出したとか、そんなことは少しも思わないの?」

「そんなこと、思ったりしないわよ。だって、あのふたりは普通の婚約者同士じゃなかったもの。依月ちゃんが気づいているかは知らないけど、元々、この婚約は契のわがままだったんだから」

「え、契が依月を好きなのは知ってたが……婚約まで?婚約から、ではなく?」

静さんの懐かしむような言葉に、千景が思わず訊ねると、彼女は楽しそうに笑って。



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