それでも、あなたを愛してる。【終】
「調べたの?」
「何が、依月の手掛かりになるか分からない」
千景と同じく驚いた凛に、即答した契。
「依月の手がかり、氷見に残ってないの」
「…ああ。依月は、俺との結婚が嫌になったと」
そう呟く契は、本当に苦しそうだった。
「そんなわけないと思いたいのにっ、」
幼なじみだから、知ってる。
契はずっと、本当にずっと、依月が好きだった。
「もっと早く、連れ出しておけばよかった。こんなことになる前に囲いこんで、守れば良かったっ」
契はそう言って、片手で顔を覆った。
悲痛に満ちた声。千景達は何も言えないまま。
「─悪い。千景、凛。ちょっと休む」
契がそう言うと、
「そう。じゃあ、出発は明後日ね。朝から迎えに来るから。わかった?契」
凛は変わらぬ態度で微笑むと、立ち上がる。
「さっ、帰ろう、千景」
話は終わったと、さっさと玄関に向かうこいつは本当に15だろうかと思いながら、千景は凛の後に続いて立ち上がった。
─玄関を開ける寸前、凛は足を止めて。
「ヤケを起こさないでね、契」
凛の言葉に、契は何も言わない。
「もしもの場合は、どうにかしてあげるから。その分、その対価に見合うだけの重い代償を払わなくちゃならないかもしれないけど」
「……お邪魔しました」
凛が言いたいことだって言って外に出るから、千景はとりあえず挨拶をして、玄関からでた。
玄関が閉まった直後、大きな物音がしたけれど。
「大丈夫。─契は、大丈夫」
そう言った凛の横顔は、何か考え込む。
「“始まりの地”に、椿家はいるんだよね。千景」
「あ、ああ」
「じゃあ......」
その横顔は、当主の顔そのもので。
千景は特に何も言えず、凛について行くしかできなかった。