それでも、あなたを愛してる。【終】
「依月と本物って、何歳差?」
「や、俺、本物についてよく知らん」
千景の言葉をバッサリと切る凛は、自身の少し伸びてきた横髪を弄りながら。
「……うん。静さん、頼んでもいいですか」
「あらあら。千景さんにもお話していいの?」
「はい。絶対に潰すと、母と約束してますし」
「フフッ、それは秋子(アキコ)ちゃんらしいわ〜」
楽しそうに笑う静さんの瞳の奥は仄暗く、
「千景さんは、四季の家の“内部”まで知らないのでしょう?凛くんや紫苑さんは知っているし、契は察しているみたいだけど、う〜ん、話してしまってもいいのかしら」
なんて、誰に対しての言葉なんだか。
「教えていいと思いますよ。千景も、いつかは当主になる運命だ。ならば、知っておいた方が良い」
凛の口ぶりからして、千景はこれから先のために知っておくべきもの。
それが例えどんな話であっても、凛が知っておくべきだと判断するものは間違いなく、いつかの千景の糧となる。
「……教えてください、静さん。少しでも情報を集めて、俺は“始まりの土地”へ行きたいです」
─これは、千景なりの覚悟だ。
橘家に生まれ、父の後を継ぐと決めたあの日から、積み重ねてきたものは決して無駄ではなかったけれど、きっと、そういうものとはまた違う、当主になるために必要な。
「そんな不安そうな顔しないで、千景」
どんな話が出てくるのか、ドキドキする。
少し怖いかもしれない。ああ、でも。
「大丈夫。お前なら絶対、大丈夫だよ」
しっかり者の、年下の幼なじみがそう言うから。
「……ありがとな」
千景は凛にお礼を言って、静さんに頭を下げた。