それでも、あなたを愛してる。【終】
「だから、調律者はこちら側を出ました。依月を連れて……正直、依月の件は時間の問題ですから、調律者次第ですが、すぐに貴方の元に戻せるかもしれません。でも、居なくなった時と同じ彼女が帰ってくるとは思わないでください。少なくとも、彼女の肉体は3年、止まっていました。こちら側と現実では時間の流れ方が違いますから、本人も混乱するでしょう。でも、それに根気強くお付き合いしてください。それが出来ないなら、調律者は貴方に依月を託すことはできません」
そんなこと、覚悟の上。
彼女が生きて帰って来るだけでも、僥倖なのに。
「調律者は、依月を大切にしているようで。彼は人間と伺いましたが」
契が訊ねると、ルナは小さく頷いて。
「あなたに覚悟があるのなら」
「調律者が誰なのか、教えてくれます?」
「勿論。覚悟があるなら教えますよ。破った日には、神としての鉄槌を下すことになりますが」
「わかりやすくていいじゃないですか」
契は笑った。
例え、どんな姿で帰って来ようと、二度と手放すつもりなんてないからだ。
彼女を諦める気なんて毛頭ないし、彼女を失わない為ならば、なんだって差し出せる。
─この命も、人生も。
すると、ルナはステラと顔を見合せ、小さく微笑み。
「ならば、調律者のお話をいたしましょう」
─契たちが知らない物語。
人の欲が壊した、ひとつの家族の話。
愛の話。
ルナの口から語られるそれは、契の肩を震わせた。