君の隣が、いちばん遠い
放課後の図書室で、一緒にノートを広げる時間。

わたしは問題を解くふりをしながら、ときどき彼の横顔を見てしまう。


真剣なまなざし。

筆を持つ手の動き。

ときどき、ページをめくる音。


全部が、愛おしかった。


「ここ、答えわかんなかったんだ」

「どれどれ……ああ、これなら、こうやってみて」


自然に近づいて、ノートを指さす彼の声。

少しだけ体が触れて、わたしの心臓はまた忙しく跳ねる。


休日は駅前で待ち合わせて、カフェに行くことも増えた。


「チーズケーキ、美味しいよ。ひとくち食べてみる?」

「……うん」


ひとつのフォークを差し出されて、どきどきしながら受け取る。

静かなカフェの席で向かい合って座ると、なんだか映画のワンシーンみたいで、恥ずかしくなる。


「なに、そんなに緊張してる?」

「……してない」

「うそ。耳、真っ赤だよ」


わたしは慌てて髪を耳にかけなおした。




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