君の隣が、いちばん遠い
一ノ瀬くんとの関係も、紗英ちゃんと柊くんの関係も。
どちらも「はっきり言えないこと」が少しずつ積もっていく。
そんな気がして、私は小さく息をついた。
「風、変わってきたよね」
ぽつりと紗英ちゃんが言った。
「うん、秋だね」
でも、それは季節の話だけじゃない。
きっと、わたしたち自身の中にも、小さな“変化の風”が吹いている。
その夜、わたしはふと、修学旅行のことを考えていた。
同じ班のメンバー、行き先、自由行動の計画。
そして――
誰と、どんな時間を過ごしたいのか。
ただ楽しいだけじゃない。
きっと、大事なことが、見えてくる旅になる。
そんな気がしていた。