君の隣が、いちばん遠い
②この班でよかったって、言いたくて
「班決め、来週の月曜にするらしいよ。早くない?」
放課後の教室で、紗英ちゃんが背もたれに寄りかかりながら言った。
「うん、でもまあ、決まってるしね」
わたしは笑いながら答える。
「だね」
「だな」
「そうだな」
揃ってうなずくのは、一ノ瀬くんと柊くん。
この4人で修学旅行の班を組もうと決めたのは、夏休みが終わる少し前のことだった。
海に行った帰り道、4人で自然とそんな流れになって、異論なんてひとつもなかった。
紗英ちゃんが隣でクスッと笑う。
「それにしても、班決め前にもう決まってるって、うちらズルくない?」
「まあ、早い者勝ちってことで」
柊くんの言葉に、わたしたちは笑い合った。
だけど、そんな和やかな雰囲気の中、ふとした瞬間に気づく。
紗英ちゃんの目線の先に、柊くんがいること。
柊くんが、わざとらしくない程度に彼女の言葉を拾おうとしていること。
そのどれもが、どこかぎこちなくて、でも、真剣だった。
……やっぱり、気になってるんだ。
わたしはそっと胸の中でつぶやいた。