君の隣が、いちばん遠い
「気持ちはわかるけど、あいつらのことはあいつらに任せた方がいいと思う。下手に手を出すと、逆に変に気を遣わせるかもしれないし」
「でも、放っておいて、もっと気まずくなっちゃったら……」
「ひよりがやさしいのはわかってる。けど、それとこれとは別だよ」
わたしは言葉に詰まった。
一ノ瀬くんの言うことも正しい。
無理やり間に入って何かを変えようとすることが、必ずしもいい結果を生むとは限らない。
でも、わたしは――
「……でも、私、後悔したくないの」
小さく、それだけを言った。
「後悔?」
「ふたりが、あとで“ちゃんと気持ちを伝えればよかった”って思っても、間に合わなかったら悲しいでしょ」
沈黙が流れた。
風が吹いて、木々の枝がさらさらと音を立てる。
一ノ瀬くんは小さくため息をついて、ゆっくり歩き出した。
「……オレもさ。あいつらのこと、応援してないわけじゃないよ。ただ、ひよりが頑張りすぎて疲れちゃうの、やだなって思ったんだ」
わたしはその言葉に、胸の奥がじんわりあたたかくなるのを感じた。