君の隣が、いちばん遠い


「ありがとう。一ノ瀬くん」

「ごめん、ちょっと言いすぎた」

「ううん。わたしも、押しつけがましかったかも。……じゃあ、気まずそうにしてたら、ちょっとだけフォローして、あとは見守る、ってことで」

「賛成」


手がふれる距離で、わたしたちは歩いていく。

いつの間にか、空はオレンジ色に染まりはじめていた。







修学旅行の準備は、少しずつ本格的になっていった。

班ごとに行きたい場所を調べたり、自由行動の計画を立てたり。


「ここ、絶対行きたい!」


紗英ちゃんがタブレットを持って、画面を指さす。


「映えそうだけど、めっちゃ混むと思う」


柊くんがぼそっと言って、紗英ちゃんがむっとする。


「混むからってやめるの? 覚悟が足りないね~」

「いや、別にダメとは言ってねーけど……」


そのやりとりに、一瞬、ピリッとした空気が流れる。

でも、わたしは目の前のマップを見ながら、何気ないふりで話をつなげる。

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