君の隣が、いちばん遠い


「じゃあ、そこは午前中に行くようにして、午後は別の場所にしようか?」

「それなら、時間的にもいいかもな」

「ナイス調整、ひより」

「ふふ、ありがと」


そんなふうに、少しずつ、空気が和らいでいく。


誰かが誰かのために、ちょっとだけ勇気を出して踏み込む。

それが、きっと今のわたしたちに必要な“距離感”なのだと思う。



その夜、一ノ瀬くんからLINEが届いた。


《順調に行先も決まってきたね。ほんとにこの4人でよかったなって思ってる》

《わたしも。修学旅行、楽しみにしてる》


スマホの画面がやさしく光る。


もうすぐ始まる、秋の旅。

そこには、ほんの少しずつ動き始めた“それぞれの想い”が重なっていく。


この班でよかった――

そう胸を張って言える日が、きっと、来ると信じていた。



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