君の隣が、いちばん遠い
ああ、一ノ瀬くんも、ちゃんと考えてくれてるんだ。
わたしだけじゃなくて、彼も同じように、「今年のクリスマスを特別にしたい」って思ってくれてる。
そのことが、胸の奥でじんわりと嬉しかった。
でも、同時に、少しだけ不安もあった。
どこかで、わたしは一ノ瀬くんに「してもらう」ことばかりを期待してるんじゃないかって。
この一年、彼からもらった優しさやぬくもりを、わたしはどれだけ返せてきただろう。
そう思ったら、プレゼント一つにしても、ちゃんと気持ちを込めたいと思った。
週末、美帆ちゃんとふたりで駅前のショッピングモールに出かけた。
雑貨店を見てまわりながら、美帆ちゃんと「こういうのはどうかな」「一ノ瀬くんっぽいよね」なんて話し合う時間も、なんだかすごく楽しくて、気がつけば夕方になっていた。
「これ、どうかな……?」
革のキーケースを手に取りながら、わたしがつぶやく。
「うん、いいと思う。使いやすそうだし、ひよりのセンスが出てる」