君の隣が、いちばん遠い


「これで、あの進路希望調査を白紙で出してきた子とは思えないな」

「えっ、それまだ言うんですか」

「ははは、あれも思い出だろ。……教師って仕事、悪くないぞ」


その言葉に、わたしは自然と笑っていた。





帰宅後、遥くん、柊くん、紗英ちゃんとグループ通話をつないだ。


「合格おめでとうー!!!」と紗英ちゃんが最初に叫んでくれた。

それに続いて柊くんも「よくがんばったな、佐倉さん!それから遥も!」と声を上げた。


「ありがと。ふたりとも、いつも応援してくれてたから……わたし、ちゃんとがんばれた」

「それ言うなら、俺も。遥に何度勉強のコツ聞いたことか。ふたりとも、おめでとう」

「……みんなで春を迎えられて、ほんとによかった」


スマホ越しなのに、画面の向こうから温かさが伝わってくるようだった。


確かに、未来はまだ見えない。

でも、いまこの瞬間、わたしは確かに“希望”に立っている。


受験が終わったわけじゃない。

春は始まったばかり。


でも、“同じ春”を迎えられたことが、こんなにも嬉しくて、胸がいっぱいになる。


リビングの窓から見える空は、いつもと同じように青くて澄んでいた。


でも――今日の空は、少しだけ特別に見えた。




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