君の隣が、いちばん遠い
第5章 すれ違う季節のなかで
①となりの景色が変わるとき
夏が過ぎ、空の色が少しだけ澄んできた九月初め。
夏休み明けの教室は、どこかよそよそしく、それでいて浮き立つような雰囲気に包まれていた。
始業式の翌日、朝のHR前。
わたしは、教室の前方にある窓際の席でぼんやりと外を見ていた。
「花火、きれいだったねー」
隣の席にいた紗英ちゃんが、突然にっこりと笑って話しかけてくる。
すぐそばでは、柊くんが手を組んで大げさに頷いていた。
「うんうん。屋台も最高だったし、佐倉さんの浴衣、マジで反則だったわ」
「……やめて」
わたしが苦笑しながら言うと、柊くんはますます楽しそうに笑った。
「で、遥はどう思ってんの? あのときさ、めっちゃ顔赤くなってたじゃん」
「おまえは余計なことを言いすぎ」
一ノ瀬くんが呆れたように言いながらも、耳の先だけがほんのり赤くなっている。