天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約
その夜、スイートルームの空調はほどよく涼しく、
咲良は描き終えたあと、バスローブのままソファで紅茶を飲んでいた。
「今日はよく描けたよ」
レオンはそう言って、スケッチブックのページを閉じる。
「ふーん。私は……あんまり動けなかったけどね」
「動かなくていい。君がそこにいてくれるだけで、十分なんだ」
甘すぎる言葉に、咲良は反応しきれずに黙った。
照れくさい。でも、嫌じゃない。
そのとき──
「続いての話題です。都内・下町の路地裏で見つかったストリートアートが、SNSを中心に話題となっています」
テレビの音声に、ふたりの視線が自然と向いた。
画面に映し出されたのは、薄暗い夜の街角。
古びた壁に描かれた、大きな『虹』。
「この独特な色彩と構図から、海外で活動する覆面アーティスト“L”による作品ではないかと見られており……」
咲良の手が、カップを持ったまま止まる。
(この虹……見たことある。いや、あれは──)
言葉にはならなかった。
でも確信だけが胸を突いた。
それは、あの夜、自分が背負い投げしたあの場所。
彼が、痛みをこらえながら描いていた絵。
「……レオン」
思わず呼びかけた。
レオンはソファに肘をかけたまま、穏やかな表情でテレビを眺めている。
「この“L”って……もしかして」
その瞬間、レオンの目がゆるやかに揺れた。
けれど彼は何も言わず、ただ微笑んだ。
「さて、どうだろうね」
その曖昧な返しに、咲良の胸の奥が、すっと冷えたような気がした。
咲良は描き終えたあと、バスローブのままソファで紅茶を飲んでいた。
「今日はよく描けたよ」
レオンはそう言って、スケッチブックのページを閉じる。
「ふーん。私は……あんまり動けなかったけどね」
「動かなくていい。君がそこにいてくれるだけで、十分なんだ」
甘すぎる言葉に、咲良は反応しきれずに黙った。
照れくさい。でも、嫌じゃない。
そのとき──
「続いての話題です。都内・下町の路地裏で見つかったストリートアートが、SNSを中心に話題となっています」
テレビの音声に、ふたりの視線が自然と向いた。
画面に映し出されたのは、薄暗い夜の街角。
古びた壁に描かれた、大きな『虹』。
「この独特な色彩と構図から、海外で活動する覆面アーティスト“L”による作品ではないかと見られており……」
咲良の手が、カップを持ったまま止まる。
(この虹……見たことある。いや、あれは──)
言葉にはならなかった。
でも確信だけが胸を突いた。
それは、あの夜、自分が背負い投げしたあの場所。
彼が、痛みをこらえながら描いていた絵。
「……レオン」
思わず呼びかけた。
レオンはソファに肘をかけたまま、穏やかな表情でテレビを眺めている。
「この“L”って……もしかして」
その瞬間、レオンの目がゆるやかに揺れた。
けれど彼は何も言わず、ただ微笑んだ。
「さて、どうだろうね」
その曖昧な返しに、咲良の胸の奥が、すっと冷えたような気がした。