天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約
レオンの告白が、部屋の空気を変えた。

スイートルームの朝は静かだったのに、
心臓の音だけが、騒がしく響いていた。

「……君が、欲しいわけじゃない。
 君を手に入れたいんじゃない。
 君そのものを、ただ愛してるんだ」

その声は、咲良の奥の奥に届いた。

こんなふうに、触れもせずに
「すべてを肯定された」ことなんてあっただろうか。

気づけば、咲良の足元がすこしだけ揺らいでいた。

ほんの一歩、レオンが近づく。

その瞳は、相変わらずまっすぐだった。
恐れも、迷いも、何もない。
ただ、彼女だけを見ている。

そっと咲良の頬に手が伸びる。
左腕ではない、まだ動く右手で──やさしく、触れた。

その手は大きくて、温かくて、
ずっと以前から自分を知っていたような感触がした。

「……キス、してもいい?」

問いは優しいのに、心臓は暴れそうだった。

咲良は、ほんのすこしだけ首を縦にふった。

次の瞬間、くちびるが触れた。

それは驚くほど静かでやわらかく、
痛みも過去も、全部溶かしてしまいそうなほど。

(こんなキス、あるんだ……)

触れているだけなのに、
なにか大切なものが、じわじわと心にしみ込んでくる。

キスの中で、レオンの指が髪をそっと撫でる。
まるで線を引くように、彼女の存在をなぞっていた。

咲良の手が、自然とレオンの胸元をつかんでいた。

もう、逃げなくていい。
この人の中に、身を委ねてもいいんだ。

そう思えるほど、レオンの愛は深くて、
あまりにもやさしかった。
< 18 / 63 >

この作品をシェア

pagetop