天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約
「なんでも、って言ったよね?」

その言葉に、咲良の背筋がぞわりと凍った。

「ま、待って、今のはその、勢いで……!」

「タクシー、呼んでくれる?」

男は痛む腕をかばいながら、微笑を浮かべる。
まるで“この先に何があるのか”を知っているような目をしていた。

「……とりあえず、病院行こうね。ね!」

咲良は半ばパニックになりながらも、スマホを取り出してタクシーを呼んだ。
罪悪感、焦り、そして少しの不安がごちゃ混ぜになって胸の中で渦巻く。




到着したタクシーに乗り込み、向かったのは都内でも有名な5つ星ホテルだった。

咲良はフロント前で立ち尽くす。

「え、ちょ、ここ!?」

「うん。いつも泊まってる場所。病院は後。先に必要なのは……」

「なに?」

レオンは振り返り、いたずらっぽく微笑んだ。

「君の身体を、ちゃんと見せてもらうことだ」

「……え?」

頭が真っ白になった。

エレベーターに乗せられ、最上階のスイートルームへ。
開かれた扉の先には、まるで映画のセットのような空間が広がっていた。

厚手の絨毯。高い天井。
そして部屋の奥には、大きな白いキャンバス。

「ここで描くんだ」

「え、ちょっと待って、描くって……?」

レオンはソファに腰を下ろし、咲良をまっすぐ見つめた。

「ヌードモデルになって。今夜だけでいいから」

「…………なに、言ってんの……?」

声がかすれる。

でも、咲良の中のどこかが、ずっと前から予感していた気がした。

「なんでもする」って、言ってしまった。

──自分の身体を、絵にされる。

それがどういうことかなんて、考える間もなかった。

ただ、レオンの瞳はまるで、彼女という人間そのものを描きたがっているようで。

そして咲良は、言ってしまった。

「……一晩だけ、だよ」
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