天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約
雨が止んだのは、アトリエにたどり着いたころだった。
レオンの手に導かれ、咲良は古びた木造の建物へ入った。
パリのはずれ、静かな小道の奥。
扉を開けると、懐かしい匂いがした。
絵具のにおい。
紙とインクと、空気を切る鉛筆の気配。
どこかスイートルームを思い出す、やさしい静けさ。
「ここ……レオンの?」
「うん。誰にも教えてない。……君が、初めて」
咲良は少しだけ目を見開いた。
レオンは、濡れたジャケットを壁にかけると、イーゼルの前に立った。
手が、スケッチブックではなく、大きな白いキャンバスを撫でる。
「ねえ、咲良」
その声は、どこまでもまっすぐだった。
「もう一度、君を描かせてほしい」
咲良の胸の奥が、すこしだけ熱くなる。
「モデルとしてじゃない。
罪滅ぼしでもなくて。……ただ、『描きたい』から。
君という人を、僕の目で、ちゃんと見て、描きたい」
その目が、まっすぐ咲良を見ていた。
拒めなかった。
というより、拒否したいなんて一瞬も思わなかった。
咲良は、そっと椅子に座る。
もう、緊張もなかった。
恥ずかしさも、不安もなかった。
その代わりにあったのは、
「この人なら、ちゃんと私を見てくれる」
という、根拠のない確信だった。
レオンが鉛筆を持ち、最初の一線を引く。
その音が、空気を震わせる。
再び始まったふたりの線は、以前よりも柔らかくて、あたたかかった。
レオンの手に導かれ、咲良は古びた木造の建物へ入った。
パリのはずれ、静かな小道の奥。
扉を開けると、懐かしい匂いがした。
絵具のにおい。
紙とインクと、空気を切る鉛筆の気配。
どこかスイートルームを思い出す、やさしい静けさ。
「ここ……レオンの?」
「うん。誰にも教えてない。……君が、初めて」
咲良は少しだけ目を見開いた。
レオンは、濡れたジャケットを壁にかけると、イーゼルの前に立った。
手が、スケッチブックではなく、大きな白いキャンバスを撫でる。
「ねえ、咲良」
その声は、どこまでもまっすぐだった。
「もう一度、君を描かせてほしい」
咲良の胸の奥が、すこしだけ熱くなる。
「モデルとしてじゃない。
罪滅ぼしでもなくて。……ただ、『描きたい』から。
君という人を、僕の目で、ちゃんと見て、描きたい」
その目が、まっすぐ咲良を見ていた。
拒めなかった。
というより、拒否したいなんて一瞬も思わなかった。
咲良は、そっと椅子に座る。
もう、緊張もなかった。
恥ずかしさも、不安もなかった。
その代わりにあったのは、
「この人なら、ちゃんと私を見てくれる」
という、根拠のない確信だった。
レオンが鉛筆を持ち、最初の一線を引く。
その音が、空気を震わせる。
再び始まったふたりの線は、以前よりも柔らかくて、あたたかかった。