天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約

第6話 レオンのミューズ

「……これ、君だよね?」

スマホの画面を差し出され、咲良は小さく目を見開いた。

そこに映っていたのは、パリのとある路地に描かれたストリートアート。
伏し目がちな横顔、濡れたようにきらめくまつげの影、
そして胸元には――あの、ピンクダイヤのネックレス。

それは、まぎれもなく「咲良自身」だった。

「すごく綺麗な絵だって、フランスのアート系SNSで話題になってるんだって。
 このモデルが誰なのかって、みんな探してるらしいよ」

言葉の意味を完全に理解できたわけじゃなかったけれど、
伝わったのは「自分が世界に見られている」ということだった。

咲良は戸惑いながらも、その絵をまじまじと見つめた。

(レオンが描いた私が、みんなに見られてる)

ホテルの一室、やわらかな朝の光の中。
カーテン越しの風が、髪をゆるく揺らす。

隣ではレオンが、新聞とコーヒーを片手にのんびりしていた。

咲良は画面をそっとレオンに見せる。

「……レオン」

「うん、見たよ」

彼はくすりと笑って、指先で咲良の髪をひとすじなでた。

「君は、世界が驚くほど美しいから。気づかれて当然さ」

その言葉に、咲良の胸がきゅっとなる。

(そんなの、冗談みたいだ)

でもその冗談は、現実になりつつあった。

この日から、咲良の存在は「ただの恋人」ではなく、
「レオンのミューズ」として、世界に知られていく。

光に照らされて、ふたりの輪郭が少しずつ浮かび上がり始めていた。
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