天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約
「ねぇ、今日もまた声かけられたの?フランス語で」
「……うん。何言ってるのか全然わかんなかったけど、なんかにっこにこで話しかけてきたから、ひたすら会釈して逃げてきた」
咲良は夕飯のサラダをつまみながら、どこか困ったように笑った。
レオンはその向かいで、グラスを片手に肩をすくめた。
「それは……仕方ないね。君は可愛いから」
「うそばっかり。絶対、アジア人珍しいんでしょ」
「ちがうよ」
レオンの声は、珍しくぴしりと強かった。
「君は珍しいんじゃなくて、特別なんだ。
こっちの人間だって、見ればわかる。あの線の美しさ。
首の傾き、髪の揺れ、肩の形、歩き方……全部、目を引く」
咲良はフォークを止めた。
褒め言葉に慣れていない自分が照れたのもある。
でも、それ以上に、レオンのまなざしが少しだけ硬かったからだった。
(なんだろう……いまの、ちょっと違った)
レオンはグラスを口元に運びながら、ちらりと窓の外に目をやった。
夕焼けが、アトリエの窓に柔らかくにじんでいた。
*
その翌日。
咲良がひとりでマルシェに向かうと、声をかけてくる男性がまた現れた。
背の高い紳士風の人。
濃い碧眼のモデルのような青年。
カフェのオーナーらしい年配の男性まで。
言葉はわからない。
でも、笑顔と一緒に投げかけられるフランス語は、どこか甘く響いていた。
咲良は苦笑して何度も首を振ったが、彼らは楽しそうに手を振っていった。
*
「また声をかけられた?」
帰宅してすぐのレオンの第一声だった。
咲良は「うん、でも大丈夫だったよ」とだけ返した。
けれど、レオンはその返事を聞いてから、スケッチを途中でやめた。
机に突っ伏すようにして、静かに呟いた。
「……誇らしいはずだったのに、なんでこんなに苦しいんだろう」
咲良は、それ以上、何も言えなかった。
「……うん。何言ってるのか全然わかんなかったけど、なんかにっこにこで話しかけてきたから、ひたすら会釈して逃げてきた」
咲良は夕飯のサラダをつまみながら、どこか困ったように笑った。
レオンはその向かいで、グラスを片手に肩をすくめた。
「それは……仕方ないね。君は可愛いから」
「うそばっかり。絶対、アジア人珍しいんでしょ」
「ちがうよ」
レオンの声は、珍しくぴしりと強かった。
「君は珍しいんじゃなくて、特別なんだ。
こっちの人間だって、見ればわかる。あの線の美しさ。
首の傾き、髪の揺れ、肩の形、歩き方……全部、目を引く」
咲良はフォークを止めた。
褒め言葉に慣れていない自分が照れたのもある。
でも、それ以上に、レオンのまなざしが少しだけ硬かったからだった。
(なんだろう……いまの、ちょっと違った)
レオンはグラスを口元に運びながら、ちらりと窓の外に目をやった。
夕焼けが、アトリエの窓に柔らかくにじんでいた。
*
その翌日。
咲良がひとりでマルシェに向かうと、声をかけてくる男性がまた現れた。
背の高い紳士風の人。
濃い碧眼のモデルのような青年。
カフェのオーナーらしい年配の男性まで。
言葉はわからない。
でも、笑顔と一緒に投げかけられるフランス語は、どこか甘く響いていた。
咲良は苦笑して何度も首を振ったが、彼らは楽しそうに手を振っていった。
*
「また声をかけられた?」
帰宅してすぐのレオンの第一声だった。
咲良は「うん、でも大丈夫だったよ」とだけ返した。
けれど、レオンはその返事を聞いてから、スケッチを途中でやめた。
机に突っ伏すようにして、静かに呟いた。
「……誇らしいはずだったのに、なんでこんなに苦しいんだろう」
咲良は、それ以上、何も言えなかった。