天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約
「じゃあ、そこに立って」

レオンの声はいつもより低く、優しかった。

咲良はソファの前、カーテンのかかる窓辺に立つ。
下着姿の自分が、こんな風に誰かに見られるのは、たぶん初めてだ。

(いや、「見られる」っていうか……「見つめられてる」……)

それがどれだけ違うことなのか、今になってわかる気がした。

レオンの視線は、まるで線をなぞるように丁寧だった。

じっとりと肌を這うようないやらしさはなく、
ただ静かに、美しさを確かめるような──純粋な目。

「……背中を少し、そらして。そう、肩甲骨のラインが……完璧だ」

その言葉に、咲良の心臓がどくんと鳴る。

(完璧……? 私の身体が……?)

今までの恋人たちは、咲良の身体を見て「守られたくない」と言った。
抱きしめるより、投げられそうで怖いと冗談混じりに笑われた。

けれど、この男は違った。

「肩の筋肉がとてもいい。張りすぎてない。やわらかくて力強い。君の輪郭は、描いていて楽しい」

「……恥ずかしいんだけど」

思わずつぶやくと、レオンがふと笑った。

「僕のためじゃないよ。これは、君の“美しさ”を世界に残すためだ」

その言葉が、じんわりと咲良の胸に染み込んでいく。

恥ずかしさと、高揚と。
「誰かに見つめられて、肯定される」という体験に、
咲良の心はゆっくりと溶けていった。
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