天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約
翌朝。
咲良は自分の頬に、うっすらと赤みが残っているのに気づいた。

──あの視線。
まるで愛を込めてなぞるような、あたたかいまなざし。

「美しい」
「描いていて、楽しい」
「君の線は、どこも無駄がない」

思い出すたびに、胸がくすぐったくなる。

(昨日だけのはずだったのに……)

けれど気づけば、その夜も、咲良はまたスイートルームにいた。

「また来てくれると思った」

出迎えたレオンは、変わらず左腕を吊ったまま、嬉しそうに笑っていた。

「し、仕方ないでしょ。怪我治ってないし……責任、あるし」

「トレビアン。君のそういう誠実なところ、大好きだよ」

そう言って、当然のように準備されたバスローブを手渡される。

──それから。
ふたりの、静かな夜が始まる。

部屋は広く、窓の向こうには夜景。

咲良はいつものように下着姿になり、立つ位置を微調整され、そして──

「今日の光、すごく君に似合ってる」

そんなひとことに、心がじんわりあたたまる。

(おかしいな……なんで、また来ちゃったんだろ)

でも、描かれるたびに、咲良は少しずつほどけていく。

「怖い」って言われたこの身体を、
「美しい」って言って、見つめてくれる人がいる。

そのことが、ただうれしかった。

そうして、咲良は気づく。
もう一晩だけ、なんて無理だった。

この人の前でなら、何度でも描かれてもいい──

そう思ってしまっている、自分に。
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