天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約
カーテン越しの光が、頬にふわりと差し込んだ。

咲良はゆっくりと目を開けた。

ベッドの隣には、あたたかな腕。
くすんだブロンドの髪が枕に流れていて、
その胸に、咲良はすっぽりと抱かれていた。

「……おはよう」

「うん、おはよう」

レオンの声は、寝起きなのに優しくて甘くて、
心の奥まで染みこんでくるようだった。

「昨夜は……いろいろ言っちゃって、ごめんね」

「僕も。勝手にひとりで悩んで、決めつけてた」

咲良はそっと顔を上げた。

「でも、うれしかったよ。
 嫉妬してくれたのも、ちゃんと気持ちをぶつけてくれたのも」

レオンは照れくさそうに笑った。

「君のことになると、冷静ではいられなくなる。
 こんなの、生まれて初めてなんだ」

「わたしも。……だから、こんなに強くなりたいって思えたんだと思う」

「君はもう、十分強いよ」

レオンは咲良の頬に、そっと手を添えた。

「……これからは、毎朝こうして、君の隣で目覚めたい。毎晩、君のぬくもりを感じて眠りたい」

「……毎晩」

「君と生きていくって、もう決めたから」

咲良はそっと目を閉じて、レオンの胸に顔をうずめた。

(この人となら、世界がどう変わっても、大丈夫だ)

不安がすべてなくなったわけじゃない。
それでも、いまはただ──幸せだった。

静かな朝。
ふたりの息が、ゆっくりと重なっていく。

これは、恋の終わりではない。
ようやく始まった「ふたりの物語」の、第一章の終わり。

そして──

また、新しい朝の始まり。
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