天才画家に描かれて、毎晩とろけそうです ―スイートルームで始まる、芸術と恋の独占契約
「……最近、構えがやわらかくなったな」
畳の上、目の前の男がふとそんなことを言った。
朝比奈道場。
咲良は白い道着に袖を通し、組手に励んでいた。
組手の相手は、幼なじみの榊原隼人。
長身で切れ長の目、髪は短く、無口で真面目。
昔から咲良の柔道のパートナーだった。
腕も強いが、無駄な力は入れず、攻めも守りも冷静。
道場の内外で「堅物イケメン」と密かに評判だが、本人はまったく意に介していない。
「そう? 気のせいじゃない?」
咲良は笑ってごまかした。
「いや、力の抜き方が変わってる。昔より、『見られる意識』がある」
「……っ!」
思わず言葉に詰まる。
隼人は組手の構えを緩めず、淡々と言葉を続ける。
「良い意味で、女らしくなった。柔らかくて、しなやかで。前は投げることしか考えてなかったのに」
「ちょっ……そんな言い方、失礼じゃない?」
「本当のことだ」
そっけない口調なのに、不思議と胸に刺さる。
「見られていること」を意識するようになったのは、確かだ。
あの夜から、レオンの視線が脳裏に残っていて、無意識に姿勢や呼吸まで変わってきたのかもしれない。
(……バレてるの、ちょっと恥ずかしいな)
「別に……なんでもないから。変わってないよ」
「ふうん。ならいいけど」
組手は再開されたが、咲良の頬はじんわり熱を帯びていた。