【番外編】過保護な医者に、今度は未来まで守られてます
術前カンファレンスを終えたばかりのカンファレンスルーム。
滝川と神崎はファイルを閉じながら、ひと息つく。

「外科チームも乗り気だったな。あの症例、かなりスムーズに運べそうで何よりだ」

「ですね。麻酔科も納得してくれてましたし。術後管理はこっちでしっかりやります」

神崎が落ち着いた声で返すと、滝川はコーヒーの紙カップを手にして、神崎の方をちらりと見た。

「で……雪乃さんの方は、最近どう?定期検診では特に問題なかったけど。」

唐突ではあるが、穏やかに投げられたその問いに、神崎は一拍置いて、口元をわずかに緩めた。

「順調です。体力も戻ってきてて。」

「そっか、よかった。……それで、正社員の仕事を始めるって?」

「ああ、そうなんです。前から少しずつ話してたんですが、『ことり不動産』っていう知り合いのところで。お弁当屋の息子さんの会社なんですよ」

滝川は「おお」と頷きながら、神崎の顔をじっと見る。

「週5のフルタイムだっけ?無理してないか?」

「本人はやる気満々です。僕からも止めるつもりはありません。……でも、何かあったらすぐ相談するように言ってますし、僕が気づける範囲ではちゃんと見てます」

「まあ、お前がそばにいるなら安心だけどな。専属医兼専属彼氏ってわけだ」

茶化すように言ってから、滝川はやや真面目な顔つきになる。

「でも、ちゃんと本人のペースは見てあげてな。元気でも、たまに心の方が置いてけぼりになることもあるからさ」

「はい。……わかってます。ありがとうございます」

神崎が静かに頷くと、滝川はふっと笑って肩を軽く叩く。

「ま、仕事復帰してくれるのは嬉しいことだ。……前に比べて、顔つきもしっかりしてきたもんな。彼女、強くなったよ。あれは本人の努力と、あと――王子様の効果か?」

「……からかわないでください」

神崎は少しだけ苦笑しながら目を伏せたが、その頬は確かにわずかに紅潮していた。
滝川はその様子を見て、ニヤリと笑った。

「いや、いいねぇ。うらやましいくらいだよ、まったく」
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