【番外編】過保護な医者に、今度は未来まで守られてます
「……ねえ、大雅」

「ん?」

隣で寄りかかっていた雪乃が、ぽそっと小さくつぶやく。

「なんか、最近……夜が好きになったかも」

大雅は少しだけ首を傾けるようにして彼女を見る。

「前は?」

「静かすぎて、いろいろ考えちゃって、苦手だった。寝るのも怖かったし」

「……今は?」

雪乃はふっと目を細めた。

「誰かの呼吸が聞こえるだけで、こんなに安心できるんだって思うようになった」

それは、たぶん大雅のことだとわかっていて、大雅もその意味を噛み締めるようにゆっくり頷いた。

「……じゃあ、毎晩俺の呼吸聞かせてあげるよ」

「なにそれ、変なプロポーズみたい」

「プロポーズの予行演習、ってことで」

雪乃は目を見開いたあと、ふっと笑って、大雅の肩に頭を預けた。

「……うん。聞かせて」

そしてそのまま、ゆっくり立ち上がると大雅の手を引いた。

「もうベッド行こ? 今日は、腕枕して」

「それ、寝返りうてないやつじゃん」

「うってもいいけど、離れたら怒るよ」

「……こわ」

笑いながらも、大雅は大人しくベッドへ向かい、布団に入ると雪乃をしっかり抱き寄せた。

「ほら、こっち。寒くない?」

「ううん、大丈夫。……ていうか、あったかすぎ」

「じゃあちょっと冷やそっか」

「だめ!」

ベッドの中で小さく笑い声が弾む。
そのぬくもりが、お守りのように雪乃を包み込んでいた。

「おやすみ、雪乃」

「……おやすみ、大雅」

彼の心音を聞きながら、まぶたが自然と落ちていく。

こんな夜が、明日も、明後日も続いていきますように――
そんなささやかな願いを胸に、雪乃は深い眠りへと落ちていった。
< 5 / 44 >

この作品をシェア

pagetop