氷壁エリートの夜の顔
 それから、彼は私の後ろに視線を投げた。振り返ると、柚月と律希がそろって口を開けたまま立ち尽くしていた。

「あ、妹の柚月と弟の律希です。今日、泊まりに来てて」

「あっ、ども……!」
「こんにちは……!」

 完全に、見惚れていましたと言うリアクション。双子が並んでフリーズするのはなかなかレアで、ちょっと笑ってしまいそうになる。

「こんにちは。同じ会社の結城です」

 結城さんが軽く会釈すると、双子もようやく口を閉じた。

「……お泊まりって、ご家族だったんですね」

 そのひと言に、昨日のラウンジでの会話がよみがえる。

──来てくれるなら、旅費はいりませんね。

 やっぱり、誤解してたんだ。

 少し照れくさくなりながら、私は「そうなんです」と笑って返した。
 すると、横から唐突に柚月の声。

「お姉ちゃん、結城さんも一緒に、ほうとうどうかな? ねぇ、りっくん」

「そうだよ、結城さん! 姉ちゃんのほうとうは本場越えだから、絶対食べてって!」

 律希まで乗ってきて、私は慌てて両手を振りながら止めに入る。
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