氷壁エリートの夜の顔
「フォーム崩れずにその距離はすごい! どんなシューズ使ってるんですか?」

「アシックス。バランスがいいから」

「私も同じ! いいですよね──」

「はいはい、ほうとうできたから運ぶの手伝って」

 キッチンから声をかけると、「はーい!」とふたりが立ち上がる音がした。

 柚月が卓上コンロをセットし、律希は持参した風呂敷包みを広げて、大皿にお稲荷さんを盛りつける。
 結城さんもキッチンに顔を出した。

「何か手伝えること、ありますか?」

「じゃあ、鍋をリビングへお願いします」

 そう頼むと、結城さんは手際よく鍋を持ち上げる。その瞬間、律希がタッパーからお稲荷さんを取り出し、にんまりと笑った。

「颯真さん、これ、母ちゃんの手作りお稲荷さん。めちゃくちゃ美味いんだよ。味見してみて」

 そしてなぜか、私の前にお稲荷さんを差し出してきた。

「姉ちゃん、結城さんにアーンしてあげなよ。姉ちゃん、年齢イコール彼氏いない歴だし、そういうのやったことないだろ。俺も毎日アーンされてるけど、なかなかいいもんだぜ?」

「え、あんた、彼女いたの?」
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