氷壁エリートの夜の顔
「あれ? ……彼氏とは、順調なんですよね?」

「う、うん。もちろんだよ」

「じゃあ咲さん、ずっと余裕あるってことですね。ますます羨ましい。私なんて、お給料入るとすぐデパート行っちゃうから、全然貯まらなくて」

 桜さんは笑いながら「戻るね」と言って、その場を離れた。

 やっぱり、節約しているってのは本当らしい。そうして浮かせたお金を、遠距離の恋人に注いでいるのか。

──恋にすべてを注げる人間。
 やっぱり、彼女もそういうタイプなんだろう。
 少しだけ冷めた気持ちが胸に残る。

──まあ、俺には関係ない。仕事にさえ持ち込まなければ、それでいい。

 そう思いながらも、なぜか足早に出ていく背中から、視線を外すタイミングを逃していた。
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