氷壁エリートの夜の顔
* * *
翌日の土曜、まさかの場所で彼女に遭遇した。
近所で見つけた定食屋「古美多」。丁寧な味付けと、にぎやかすぎない温かな雰囲気が気に入り、何度かランチに通っていた隠れ家的な店だ。
暖簾をくぐってすぐ、カウンターに立つひとりの女性が目に入った。
黒いバンダナにエプロン姿。雰囲気はまるで別人だったが、俺の存在に気づいて一瞬固まったその表情で、すぐにわかった。
──桜咲、なぜ、ここにいる。
動揺を隠すように席に着いたが、しばらくは落ち着かない。それは向こうも同じで、明らかに空気が張っているのがわかった。
しばらくして、会社よりも冷たい声で「ご注文は」と聞かれた。俺も素直にはなれず、つい口が悪くなる。
「……なんで、あんたが俺の定食屋に」
せっかく見つけたお気に入りの店が、くつろげない場所になったようで、つい皮肉を言ってしまった。
けれど、彼女が放った言葉に、俺は黙るしかなくなった。
「私なんて、もう2年も前からここで働いているんだから」
週に4日、夜はこの店で働いているらしい。
テラスガーデンで耳にした噂──遠距離恋愛の恋人に貢ぐためにお金が必要、という話が頭をよぎる。まさか、とは思っていたが……バイトの事実は、その噂に現実味を持たせた。
翌日の土曜、まさかの場所で彼女に遭遇した。
近所で見つけた定食屋「古美多」。丁寧な味付けと、にぎやかすぎない温かな雰囲気が気に入り、何度かランチに通っていた隠れ家的な店だ。
暖簾をくぐってすぐ、カウンターに立つひとりの女性が目に入った。
黒いバンダナにエプロン姿。雰囲気はまるで別人だったが、俺の存在に気づいて一瞬固まったその表情で、すぐにわかった。
──桜咲、なぜ、ここにいる。
動揺を隠すように席に着いたが、しばらくは落ち着かない。それは向こうも同じで、明らかに空気が張っているのがわかった。
しばらくして、会社よりも冷たい声で「ご注文は」と聞かれた。俺も素直にはなれず、つい口が悪くなる。
「……なんで、あんたが俺の定食屋に」
せっかく見つけたお気に入りの店が、くつろげない場所になったようで、つい皮肉を言ってしまった。
けれど、彼女が放った言葉に、俺は黙るしかなくなった。
「私なんて、もう2年も前からここで働いているんだから」
週に4日、夜はこの店で働いているらしい。
テラスガーデンで耳にした噂──遠距離恋愛の恋人に貢ぐためにお金が必要、という話が頭をよぎる。まさか、とは思っていたが……バイトの事実は、その噂に現実味を持たせた。