その声を聞かせて
チラッとミラー越しに凌を盗み見ると、いつも通り見事なフォームで打ち込んでいた。

私はまた下を向く。

目に毒だわ…

本当に。

いくら頭から消そうとしても、あの耳に残るサウンドと歌詞と声が離れない。

マスクの下の素顔が…
離れない。

結局私はこの日一度も凌と目を合わせずにジムを出た。

顔が見れない。

するとジムから凌が出て来たのが見えて私は慌てて車を発進させた。

どうか追いかけて来ませんように。

祈るようにミラーを確認する。

あ、良かった。

今日は追いかけて来ない日だ。

そしてガソリンを途中で入れてから家に帰ってエレベーターで7階へと登る。

部屋の方へ角を曲がるとそこには凌がいるじゃないか!?

どうやって入った!?

私はクルっと踵を返す。

「おい」

ヤバい…
見つかった…

「あ、凌。どうしたの?」

私は平然を装う。

「どうしたのじゃない」
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