フォーチュン・デュエット!-今日から2人で秘密のお手伝い-
1 私のチカラ

1-1秘密のチカラ

 パチッと目が覚めた。
 窓から日光がさしていて、急なまぶしさに目を細める。

 ……また今日も一日が始まった。
 いつもと同じ日々が。

 はあと一つため息をついて、仕方なく布団から出る。

 朝から、こんなにも憂鬱なのは私のチカラのせいだ。
 私には秘密がある。
 誰に言っても信じてもらえないような、私だけの秘密。

 リビングに入るとお母さんが朝ごはんの準備をしてくれていた。
 お父さんは仕事が早いから私が起きてくるころにはもう行っちゃってるんだ。

「ああ、(すず)。起きたのね。良かったらあのお皿、片づけてくれない?」

 お母さんが台所を指さす。
 その方向にはカウンターの端っこに置かれた真っ白のお皿があった。
 半分くらいカウンターから飛び出していて、いまにも傾きそうだ。

 ああ、落ちそう……!

 そう思った瞬間、お皿がカタッと小さく動いた。
 私が動く間もなく、真っ逆さまに床へと落ちていく。

 ガシャンッ

 リビング中にお皿の割れた音が響く。
 それを見て私は呆然と立ち尽くした。

 また、やっちゃった……!

「あらまあ。古かったから割れやすかったのかしら。けがはない?」
 お母さんが心配そうに近寄ってきた。
 でも、私はショックで返事をすることができない。

 今の、私のせいだ。
 また、いつもと同じ失敗をしちゃった。

 ——私には『悪いことを予想したら、そのままのことが起こっちゃう』チカラがある。

 チカラって言えばかっこよく聞こえるかもしれないけど、要は私には運がないってことなの。
 みんなも『こんなことやあんなことが起こったらどうしよう……』って不安になることあるでしょう?
 たいてい、心配事が実現することはないってお母さんたちや大人は言う。
 でも私の場合は違うの。
 私にはこれでもかって言うほど運がない。
 だから心配したことが現実で起こっちゃうの。
 例えば今みたいにね。

 お皿が落ちただけですめばいいほうだ。
 だって二年前の、小四の時の、あの事件は、あわや大惨事だったんだから……。

 私はあの時のことを思い出して無意識にぎゅっと手を握りしめる。
 立ったままの私にお母さんが不審がってもう一度尋ねてきた。
「鈴? 大丈夫? 朝ごはんにするわよー」
「は、はあい」
 仕方なく私は返事をして、パンパンッと頬を軽くたたいた。
 お母さんに心配なんてかけてられない。
 今日もつつがなく、普通の生活を送るんだから!



< 1 / 22 >

この作品をシェア

pagetop