フォーチュン・デュエット!-今日から2人で秘密のお手伝い-

 あらためまして、私の名前は今宮鈴(いまみやすず)。小学六年生。
 不運なチカラを持ってるってこと以外はごく普通の平凡。

 あ~あ、できれば不運なチカラじゃなくて幸運になれるチカラが欲しかったよ~!
 誰かこの願いをかなえてくれる人、いないかなあ。どんなことでもするからさ!

「ねえねえ聞いた? 願いをかなえてくれるって話」

 通学路を歩いてる途中。気になる話題が聞こえてきて私はピクッと耳を動かした。
 今、願いをかなえるって言った?
 声がするのは私の前を歩いている同い年くらいの女子二人からだ。
 私は気になって耳を澄ませる。

「聞いた聞いたー。あの、ビルの間に挟まってる地蔵の話でしょ?」
「それそれ。友達が早速お願いしに行ったみたいでー。効果はまだわかんないらしいんだけど、ほかの知り合いはかなえてもらったらしいよ」
「何それ、やっぱマジなんだ?」

 地蔵? 願いをかなえてくれるのが?
しかもビルに挟まれてる⁇

……なんかすっごい、うさんくさい。

占い師がアドバイスしてくれて幸せになれるって話なら分かるけど、お地蔵さんが?
そもそもお地蔵さんは生きてないんだから動けないし、いったいどうやって願いをかなえてくれるのよ!

私はもっと詳しく聞きたかったんだけど、その女の子たちは次の角で曲がって行っちゃった。
この話が本当なら、私も喜んでお地蔵さんのところに行くんだけどな。
まあ、ただのうわさみたいだし、本気にする必要はないか。

私はそう思ってスピードを速めて歩き出した。
それより早く学校に行って、また悪いことが起きないように自分の席でおとなしくしておかないと。
そんな矢先だ。

不意に背中がぞくっとするような悪い感覚に襲われた。

これって第六感ってやつ?
まさかまさか二連続で何か起こるって言うの⁉

カリッ、カリカリッ

なにかをひっかく音が聞こえてパッと上を向いた。
そばの塀の上で猫がしっぽをゆったりと揺らしてる。
その前足の先には小さなサボテンが植えられた植木鉢があった。
猫が植木鉢をひっかいて遊んでるんだ。

だけど、植木鉢は細い塀の上でぐらぐらぐらぐら、いまにも落ちてきそうだよ!

そのことに気づいて私は思わず立ち止まった。
まずい。このまま落ちちゃったら誰かが巻き込まれる!
でもどうしよう⁉ 猫を止める手立てなんかないよ!
ってか、なんで塀の上なんかに植木鉢があるのよ~~!

心の中で叫んだ途端、猫が思いっきり前足で猫パンチした!

いとも簡単にぐらついた植木鉢は重力に従ってそのまま真っ逆さまに私のほうへ。
しまった。自分が逃げること考えてなかった。
ハッとした時にはもう遅かった。

「ひゃああ!」

 怖くなって目をぎゅっとつぶったその時だ。

「危ないっ!」

 鋭い声がして腕がグイッと後ろに引っ張られた!
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