ステラクリマの匣庭ー貴方が読むまで、終わらない物語ー

Ⅱ.星の心

宙に浮かぶ光の中、星のように輝く自分がいた。けれど、光は六つの手に絡め取られ、引きずり下ろされる。

アリオト、ドゥーベ、メラク、ミザール、メグレズ、フェクダ――

彼らの手が、彼女の胸を、頭を、背を貫いてゆく。

まるでそれが当たり前かのように、彼らは彼女の内側から「何か」を奪っていった。
光の中心にあった核が砕け、断片となって宙に散らばる。

そして――声がした。

 

『それがなければ、君は星に還れない』
『取り戻して。自分を、自分で掴んで』

 

目覚めたルカの頬には、涙の跡があった。

胸の奥に、確かな確信が宿っていた。

――彼らは、私の“心”を奪った。

アリオトには、自由。
ドゥーベには、思考。
メラクには、意志。
ミザールには、言葉。
メグレズには、記憶。
フェクダには、時間。

だから自分は、ここに囚われていたのだ。感情が鈍く、思い出せず、声さえ詰まるのは――彼らが、その一つひとつを奪ったからだ。

ならば、取り戻さなくてはならない。

狂おしいほどに愛されたとしても。
彼らが泣いて縋ってきたとしても。
それでも、私は――私のままで在りたい。



それでも彼らは囁いた。



『君には、必要ない』
『考えることも、選ぶことも』
『お前の意志は、俺の不安になるだけだ』
『記憶も、感情も、全部、僕が持っているから』
『君は、僕のものだから』
『君が泣くまで、何度でも繰り返してあげる』
< 7 / 30 >

この作品をシェア

pagetop