ステラクリマの匣庭ー貴方が読むまで、終わらない物語ー

最初に向き合ったのは、アリオト。

「自由？君がまた世界に呑まれて、泣くくらいなら、檻の中で飼われていた方がマシだよ」

彼は笑っていた。薄氷のような笑みで。だがその目は、縋るように狂っていた。

「返して、お願い」
「ねぇ、わかってる？それを返したら、僕は君を止められないんだよ。君がいなくなったら、僕……壊れてしまうよ」

アリオトは自らの胸を裂いた。掌の奥にあった光を取り出し、血のような涙を流して渡した。

「どうか、壊さないで……僕を」

＊

ドゥーベはすでに、ルカの頭に指を突っ込んでいた。

「このまま、考えなければ楽になれるんだ。ねぇ、黙って僕だけ見てよ」

彼は微笑んでいた。まるで、それが愛の証のように。

ルカが首を振ると、彼は唇を噛んだ。

「思考は、毒だって言ってるのに……！君は……まだ、僕以外の何かを求めるのか？」

彼は手の中に握り潰していた光を、無理やりひねり出すようにして渡した。

「そんなの……君は僕だけ見てればいいのに……！」

＊

メラクは暴れた。床に吐き、壁を割り、爪で自分の首を掻いた。

「全部やった！全部、お前のためだったのに！それを“自由になりたい”って！？ふざけんなよ！」

血だらけの拳を振り上げ、けれどルカを殴ることはできなかった。

「……ああもう、くそが！ならもう、壊れてしまえよ……俺も、お前も！」

叫びながら、彼は自分の心臓を抉るようにして光を差し出した。

「……呪われちまえ、お前も……！」