サルビアの育てかた
 ここは絶景で有名な場所だけど、深夜になるとカップルたちが集まって車の中でそういうこと(・・・・・・)をする場所でもある。私には縁のない話だと思っていたから、思い出すのに時間がかかってしまった。
 もう少し早く気がついていれば、違ったのかもしれない。
 誰かが助けに来るはずがないもの。私はもう……。

 絶望の中、諦めの文字が頭を過る。今までこんな経験をしたことがなくて、何をされるのかもよく分かっていなかった。だけど、全身に鳥肌が立つほどの嫌悪感だけは押し寄せてきていた。
 抵抗し続けているけれど、体格差がありすぎて私のちっぽけな力なんてなんの意味もない。
 嫌だ、怖い、気持ち悪い。どうしようもなく歯を食いしばった。
 早く終わってほしい……私は震えながら固く目を瞑り、ひたすらそう願い続けていた。

 ──そのときだった。 

 突然、車の窓ガラスが大きく音を立てる。拳で乱暴に叩きつけたような鈍い音だ。

 誰……?
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