サルビアの育てかた
 聞きたいこと、ないのかな。どうしてあんなことになったのか、気にならないのかな。
 疑問が次々と湧き上がり、不安に押しつぶされそうになっていた私は甘えたくなってしまった。 

「……ヒルスは、訊かないの?」

 そう質問したけれど、すぐに気まずくなり思わず顔を背けた。
 彼はこちらを見つめたまま、固まっている。
 教えてよ。あなたの考えていること。

「ヒルスは……私なんてどうでもいいと思ってる?」
「えっ」
「だから何も訊かないの?」

 そんな風に言葉を投げかけてみた。
 するとヒルスは、大袈裟に首を横に振るの。

「そんなわけないだろ。どうでもいいなら、お前のことを捜し回ったりしない。どうしてそんな風に言うんだよ」

 どこか焦ったように語尾を強くしていた。私の右手を、ヒルスは強い力で握り返してくる。それはまるで、もうどこにも行くなと伝えてきているかのような力強さだった。

「……変なこと言ってごめんね。ヒルスがいつだって私を心配してくれているのは、ちゃんと分かってるから」
「俺だって色々訊きたいんだ。でも話をするとなると、さっきの出来事をレイはまた思い出さなきゃならないだろ。嫌な思いをさせたくないんだ」

 そう言われ、ますます私の手が小刻みに震える。寒さが原因なんかじゃない。声だってひび割れてしまう。

「ヒルスは……どうしていつもそんなに優しくしてくれるの?」
「どうしてって、分かるだろ?」
「分からないよ……。妹だから? それとも家族だから?」
「……」

 彼は一瞬、言葉を詰まらせた。でもすぐに、その答えを囁いてくれるの。

「レイだからだよ」
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