サルビアの育てかた
「……ヒルス。ごめんね」

 消え入りそうな声になってしまった。
 ヒルスは眉を落とし、首を小さく横に振る。

「謝ったって遅い。俺もみんなも心配していたんだからな」
「……うん、ごめんなさい」

 どうしても声が暗くなってしまう。
 こんな私に向かって、ヒルスはあくまでも柔らかい声で、だけど厳しい口調で続けるの。

「父さんも母さんも、スタジオやスクールのみんなも、夜通しお前を捜していたんだ」
「……うん」
「帰ったら、みんなにもちゃんと謝れ」
「うん、分かってる……」

 そこまで言うと、ヒルスはそっと私の頭を撫でてくれた。彼のぬくもりが伝わってくるようで、胸の奥がまた高鳴るの。
 私の髪に触れる彼の左手を、ギュッと握り締めた。大きくて柔らかい指先に触れると、心が少しずつ落ち着きを取り戻していく。
 彼は綺麗な瞳で私を見つめたまま、何も話さなかった。
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