サルビアの育てかた
 父に「この家の娘じゃなくてもいい」だなんて心にもないことを言って、家を飛び出してきたのを正直に話す。こんな自分の言動に後悔していると私が伝えると、彼は優しく微笑んだ。
 時折ヒルスが見せてくれるその表情は、私の心に癒しをくれる。

「私、バカだよね……。お金もないのに一人であちこち歩き回って。気づいたときには、ダンススクールの前に辿り着いてた。夜遅かったからスクールは既に閉まっていたの。しばらくして建物の中から出てきたのがライクさんだった……。お仕事終わりだったみたいだよ」

 あの瞬間は、ライクさんの顔を見てホッとしたのに。あんなことをされるなんて思いもしなかった。最初からそのつもりだったのかな。それとも最初は純粋に、ただ気を遣ってご馳走してくれただけなのかな。
 理解しようとも思わない。でもやっぱり、付いていったことをとても後悔している。

 やるせない思いが再び溢れてしまい、私は無意識のうちに俯き加減になった。

「ライクさん、ビックリしてたよ。なんでこんなところにいるんだって。お父さんと喧嘩したことを話したら、ご飯へ連れて行ってくれるって言うの。ライクさんは知り合いだし、お腹も空いてたし、食事をするくらいならいいかな、と思って……」

 そこまでの話を聞いたとき、ヒルスは深くため息を吐いた。眉間に皺を寄せ、苛立ちを隠せない様子でいる。
 最後まで話さなきゃ。言いたくなくても、ちゃんと伝えるの。

 そう決心したのに、私の声はどんどん震えていく。
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