サルビアの育てかた
 ──妊娠が判明してから数日後。セナは重いつわりに悩まされた。
 食事を作ろうとキッチンに立つが、匂いが鼻を刺激して頭がクラクラしてしまう。食べ物が全く喉を通らず、飲み物はオレンジジュースしか飲めなくなった。一日中船の上で酔っているような気持ち悪さがあり、嘔吐も止まらない。
 セナはベッドから殆ど起き上がれず、ヒルスの世話も上手くできなくなってしまった。

「ママ、ママ」

 当時のヒルスは、不思議そうな顔をしてセナを眺めていた。車のおもちゃで遊んでいても、ちらちらとセナの方を振り返っては「ママ」と呼び続け、気にかけているようだった。

「ごめんね、ヒルス。ママ、ちょっとだけ元気が出ないの。パパがお仕事から帰ってくるまで、一人で遊んでいてね……」

 ヒルスの食事だけはどうにか用意していたものの、身体はどんどん重くなっていった。

 アイルはその事態を心配し、しばらく仕事を休もうかとも考えてくれたが、セナは強がり「大丈夫」と答えるだけだった。
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