サルビアの育てかた
 セナが買い出しのメモを渡したとき、そこにヒルスが駆け足でやってきた。目を輝かせながらジェイクの足下に抱きつくのだ。

「ジェーク! ジェーク!」

 たどたどしい発音で、必死にジェイクを呼び続けるヒルス。まるで「ぼくも連れていって」と懇願しているようだ。 
 ジェイクはニコニコしながらヒルスの頭を撫でると、軽々と抱き上げる。

「よしよし、ジェイク叔父さんと一緒にお出かけしたいんだな?」
「ブーブー!」
「いいぞ、ブーブーだな? 乗せてやる」

 つわりが重くなるにつれて、ろくに散歩にすら連れていけなくなった。ずっと家の中で過ごしてきたヒルスは、退屈していたのだろう。

「姉さん、ヒルスも連れていくよ」
「ええ。お願いするわ……本当に、ありがとうね」

 いつもジェイクは、ヒルスの世話を見てくれていた。ヒルスもそんなジェイクによくなついている。

 それからおよそ二ヶ月間は食事がろくに取れず、病院で点滴を受けたりもしたが体重は十キロ以上も減ってしまった。
 しかし家族に支えられ、つわりがどんなに辛くてもセナは穏やかな気持ちで妊娠生活を送ることができた。

 安定期に入ってからは段々と体調がよくなり、無理のない程度ではあるが、仕事や家事がこなせるようになった。定期検診でも大きな問題はなく、お腹の子の成長も順調だった。

 ──早く会いたい。あなたの名前は何にしようかしら? 男の子だったらハンサムな感じにしたいわね。女の子なら、可愛い響きなんてのもいい。
 ジェイク叔父さんも、お兄ちゃんも、パパもママも……みんなみんなあなたが生まれてくる日を待ちわびているわ。
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