サルビアの育てかた


 そこまでの話を聞き、私は母を見て口を閉ざす。

 そんな、辛い過去があったなんて……。

 胸が張り裂けそうになるほどの話だ。
 母の顔は優しくて、綺麗で、それでいて切なかった。顔は笑っているのに、目だけはとても悲しそうなの。
 どれだけ悔しくて辛い想いをしたのか計り知れない。だけど、たしかに母は「我が子を想う気持ち」を今でも大切に胸にしまっている。それが痛いほどに伝わってきたの。

「それから数日後に、あの子を外に出してあげたのよ。とっても可愛らしくて、気持ち良さそうに眠っていたわ」
「……そうだったんだ。お母さん、凄く辛かったよね。お父さんも、きっと……」

 私の言葉に、母は僅かに首を横に振った。

「でも……お父さんと力を合わせて何とか立ち直っていったわ。ジェイクも手伝ってくれたしね」
「叔父さんのことよく覚えてるよ。私が六歳くらいまで家の近くに住んでて、いつも遊んでもらった」
「そうね。レイもなついていたわよね」

 母に言われ、ほんのりと頬が熱くなる。

「まだまだ小さかったヒルスにも、ずいぶん助けられたわ。あの子ったら、わたしが落ち込んでると駆け寄ってきて『ママ、ママ』って呼びながら何度も頭を撫でてくれたのよ」
「えっ、そうなの?」

 意外な話に、私は思わず頬を緩めた。
 小さい頃からヒルスは優しかったんだね……そう思うと、胸がギュッと締めつけられる。
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